『燃える椿の下で』
by真也

 
 おれに何ができるのだろう。
 奴は言った。おれの仕事はこれからだと。




ACT6  〜伽〜




「さて。何から始めてもらおうかしら」
 長椅子にもたれて、奴が言う。おれは目を反らした。
 見たくない。あいつの顔なのにあいつの表情じゃない。これは、別人。
「つれないのね。こっちを向きなさい」
 顎を取られて奴の方を向かされる。力づくで跪かされた。
「汚れているけど、結構かわいい顔してるのね」
 品定めするような目つき。嫌悪に眉を顰めた。
「何すればいいんだよ」
 半分やけくそになって言う。首を振って奴の手を逃れた。距離を取る。
「威勢もいいのね。楽しめそうだわ」
 にたりと笑う。その笑みが爬虫類の顔に重なった。
「脱ぎなさい」
 いきなり言われて呆然とする。何を言われているのかわからなかった。
「服を脱ぐのよ。もちろん、全部ね」
「どうしてっ」
「何でもするんでしょ?大切なサスケ君の為だものね」
 言葉に詰まる。そうだ。こいつはサスケの命を握っている。ギュッと唇を結んだ。忍服に手を掛け、一枚一枚脱いでゆく。程なく全裸になった。
「・・・・これでいいのかよ」
「上出来よ。アタシ好みの身体だわ。ここに跪きなさい」
 命じられて、奴の前に跪いた。顔を上げて見据える。サスケの顔が面白そうに歪んだ。こちらに近づいてくる。
「いい目をしてるのね。挑戦的。誰にも屈しないって感じで潰し甲斐があるわ。さぞいい声で鳴くんでしょうね」
「!」
 ふいにそこを掴まれた。自分以外誰にも触らせたことのない場所に、鮮烈な刺激が加えられる。思わず腰を退いた。がしり。もう一方の腕で腰を囲まれる。
「・・・・なにをっ・・・・」
 歯を食い縛ってそれに耐える。目の前の顔が意地悪く言った。
「聞かせて。サスケ君とはいつからなの?」
「何の・・・ことだよっ」
 背骨づたいに痺れが走る。流されそうになる自分に必死で抵抗した。
「いつからの付き合いなの?言いなさい」
 耳を噛むように言葉を落とし込まれた。ぞくり。背が震える。答えないでいたら、そこを思い切り握りこまれた。反射的に声が漏れる。背をのけぞらせた。
「案外素直じゃないのね。もう一度訊くわよ。サスケ君とはいつからの付き合いなの?」
「・・・あっ、アカデミー・・・からっ」
 他の声が漏れないように、必死で抑えながら答える。奴が満足そうに目を細めた。
「いい子ね。アカデミー時代からだったらもう、五年以上の付き合いだわね」
「それがっ、どうし・・・た。んっ」
 言い終らないうちに息を封じられた。冷たい唇。顎が掴まれ、食い縛った歯列を開かされた。侵入する舌。隅々まで犯してゆく。渦巻く嫌悪感。嫌でも目の端に涙が滲んだ。


 違う。あいつじゃない。
 こんなの、いやだ。


「・・・はっ・・・・うっ、げほっ・・・」
 やっと息を解放され、屈み込んで咽せる。吐き気を必死で抑えた。
「うふふ、慣れてないのね。サスケ君、大切にしていたものねぇ」
「何を言ってる」
「言葉どおりの意味よ。彼、ずっと我慢してたもの。アンタを失いたくなくてね。かわいいじゃない?」
「サスケ・・・が?」
「そうよ。本当はこうしたいくせにね」
「な・・・・あっ」
 後ろに指が侵入した。圧迫感。不快感に頭を振る。刺激は容赦なかった。前のものと相まっておれの思考を奪ってゆく。奴の腕を掴み、耐えるしかなかった。
「ちょっとは、素直になってきたみたいね」
 耳元に奴の声。くすくすと笑う。
「さあ、本番はこれからよ」
 宣告。これ以上無いくらい、冷たく頭に響いた。


 未知のものが掻き乱す。
 羞恥が。苦痛が。もう一つのものが。
 無理やり奥深い所まで侵入して、内部をことごとく荒らしてゆく。
 開かれた身体はもうどうなっているのか、皆目見当もつかない。
 視界の中にサスケの顔。でも、違う。
 あいつじゃないんだ。
 あいつじゃないんだ。
 あいつはこんなことしなかった。
 でも、望んでいたというのか?
 これを・・・・。


 理性と意識がすり減らされてゆく中、混乱した頭の自分がいる。
 どうすることさえできず、ただ、おれは夜が明けるのを待った。


 いつ終わるかもわからない、長い夜だった。



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