『燃える椿の下で』
by真也

 
ACT36 〜戦い〜




 正しいことだとは思っていない。
 間違ったことだとも、思ってない。
 それでもおれは、お前を倒す。




 新しい忍服に手を通した。かけてあったベストを着る。額当てをした。
「ナルト、そろそろ時間だぞ」
 イルカ先生が襖を開けた。瞬間、言葉を無くしている。
「おまえ・・・」
 大きく開いた目。しっかり見つめて言った。
「わかった。今行くからっ」
「あ・・・・ああ」
 背筋を伸ばして玄関へと向かう。カカシ先生が待っていた。
「カカシ先生、お待たせ」
「・・・・・ナルト」
 こっちも右目がまん丸。予想通りでおかしくなった。
「なーに見てんだよっ。行くぜ」
 忍靴を履いて飛び出す。家の前で振り返った。後ろにイルカ先生がいる。姿勢を正した。
「いってきます」
「ああ、気をつけて」
 何度もここでそう言った。同じ言葉を返してもらった。これで終わりにする気はない。
 これからは、あいつと二人でここに立ちたい。だから戦う。
「じゃ、行くか」
 カカシ先生が歩き出す。遠駆けの術は使わないらしい。おれも歩き出した。
 夕暮れ。何回かこの道を往復した。カカシ先生と歩いた事もあったし、一人で歩いた事もあった。風。土や草のにおい。人々の作り出す音。子供の声。遠くでカラスが鳴いてる。
「まったく。お前にゃ、いつだって驚かされるよ」
 前を歩くカカシ先生が言った。
「そんな格好してたら、『おれは戦います』って言ってるようなもんじゃない」
 振り向いて語を継ぐ。右目が苦笑していた。
「やっぱ、そうかな」
「当たり前でしょ」
 一応の確認は平たく返された。頭を掻く。
「はあーっ。まあ、お前らしいと言えばそうだけどねぇ。よくイルカ先生が黙って出してくれたよ」
「おれもそう思う」
「『おれも』じゃないよ?後でフォローがタイヘンなんだから」
 両手を挙げて先生が言う。確かにそうだろう。サスケを人質に取られてるのに。不意打ちでも勝てないかもしれないのに。正面切って仕掛けるなんて無謀だ。それはわかってる。
 おれが戦う間、悲壮な顔して待ってるイルカ先生が浮かんだ。今度はおれが苦笑する。
「カカシ先生、ごめんな」
「謝るんならやめなさいよ」
「あのさ、全部おれのわがままだって、わかってるんだ」
「そうだねぇ。まさに、そうだな。それも命がけだ」
「でもさ。おれ、どうしてもこうしたいんだ」
 まっすぐ見つめて言う。おれは奴が嫌いじゃない。憎いわけでもない。だからこそ、正々堂々、前に立ちたいのだ。おれ自身の為に。
「わーかってるよ」
 隻眼がきれいに細まった。にっこりと笑む。
「だから、イルカ先生も止めなかったんでしょ。あの人、『先生』だから」
「カカシ先生もそうだったてば」
「そういえば、そうか〜」
 のんびりと返す。本当だ。次期火影候補とか、えらくなっちゃったけど。カカシ先生はいつまでもおれの先生なんだ。そして、イルカ先生も。
 ぐっと息を吸い込んだ。思い切って言う。これだけは言わなくては。
「先生、もしおれが帰らなかったら・・・・」
「ばーか」
 ぱしん。頭をはたかれた。驚いて目を見張る。
「お前はサスケを取り戻すんでしょ?変なこと言わないの」
 言葉が出なかった。胸が詰まる。唇を噛んで込み上げるものをやり過ごした。
「待ってるよ」
「うん」
「イルカ先生と、お前達を待っている。ほら、行け」
 カカシ先生が示す。前方にはうちは屋敷。これからおれが戦う場所。
「はいっ」
 答えておれは走り出した。奴がいる所へ。




「勇ましい格好ね」
 奴は庭にいた。木の葉の夕日を眺めていた。
「おれは今からおまえを倒し、サスケを取り返す」
 力一杯宣言する。もう決めたのだ。迷ったりしない。
「そう」
 奴は笑った。今まで見たことないくらい、嬉しそうに。そして言った。
「かかってらっしゃい」と。 
 

 
 戦いが始まる。
 あいつの為に。
 里の為に。
 そして何より、おれ自身の為に。




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