『燃える椿の下で』
by真也
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ACT28 〜発見〜
「それで、奴は出て来なかったの?」
隣をのんびりと歩きながら、カカシ先生が言った。
「うん。最初のほうにちょっとだけだったってばよ」
歩調を合わせながら、おれは答える。
「ふーん。そりゃ、思い切ったことしたねぇ」
「え?どうしてだよ」
意味がわからず聞き返した。
「だって朝までサスケだったんでしょ?それって奴にはピンチでしょーが」
「なんで?」
「そんなに長時間だったら、おまえとサスケが何か企てることもできるじゃない。それでなくても、他の誰かがサスケごと奴を始末するかもしれない」
「カカシ先生!やめろってば!」
思わず食って掛かった。誰かがサスケを?冗談じゃない。いや、冗談でもそんなこと言って欲しくない。
「おれが解術を会得すりゃいいんだろ?誰にも手出しさせないからな。先生もだぞっ」
思いっきり睨む。あいつはおれが取り戻すんだ。邪魔はさせない。
カカシ先生はたっぷりおれを見つめた後、右目に深くシワをよせて笑った。
「そうだな。・・・・・すまない」
何故だか、嬉しそうな顔。
「しかし、それだけのリスクがありながら、敢えて奴は朝までお前達だけにした。余程お前達を信じているか、奴自身の力が弱まってきているかだな」
「・・・・信じる?」
想像もつかなかった言葉に目を見開く。
「そうだよ。かなり意外なことなんだけどねぇ・・・・・」
カカシ先生の言うとおりだ。たしかにサスケは奴にとっての切り札だ。本当は表に出さないほうが得策。ある程度サスケが奴を押しのけられるようになったとはいえ、まだまだそれは完全ではない。でも、昨夜の奴は自分から奥へと消えた。代わりに、サスケを押し出しさえしたのだ。
それとも、本当に奴の力が弱まっている?
そうだとおれには有利なんだけどな。それだけ奴の力を封じやすくなる。
奴を封じる。
また自分の考えに引っかかった。どうしてだかわからない。心の中に、ごく僅かな違和感。何故かと考え込んだ。
「ま、とにかくはサスケも頑張ってるってことだな。薬が効いたねぇ」
おれの考えを打ち破るように、カカシ先生。はっと顔を上げた。
「え?薬って?」
いつか聞いた会話のことだろうか。
「いーや、何にも〜」
上手く誤魔化される。聞き返すのも躊躇われて、ただ先生と並んで歩いた。
「いっぱい食べろよ。おかわりあるからな」
給仕盆を差し出しながら、イルカ先生が言った。
「うん。腹へってたんだ」
粥の入った椀を受けとりながら、おれは答える。
「おかず、持ってくる」
イルカ先生が小さく笑い、台所へと消えた。おれはその背を見守る。
すがすがしい朝。もう何度目かになる、朝餉の時間。
カカシ先生の家に着いた時、理寧のおっさんはもう食事を済ませていた。きっと、今ごろあの舞踊のような武術をしているのだろう。
「で?おまえはもういいの?二日酔い」
椀を片手に、カカシ先生が尋ねる。
「ばっちしだって。おれ、殆ど飲んでねーもん」
「なるほどね」
昨夜、口づけを交わした後。おれたちは朝まで飲み明かした。といっても、酒の大部分を飲んだのはサスケだった。
あいつ、だいぶまわってたよな。けど、二日酔いだけは二度とごめんだ。
注がれるまま、サスケは黙々と飲み続けていた。ひょっとしたら、今日は奴が二日酔いかもしれない。
今までのこともあるし。ま、たまにはいいよな。
心の中で舌を出しながら、おれは粥をかきこんだ。イルカ先生がやってくる。ことりと皿が置かれた。
卵焼きだ。箸を伸ばしてそれにパクつく。ほんのり甘い。
「わあ。これ、甘いってばよ」
「ああ。疲れている時は、甘いものがいいからな」
「イルカ先生〜、これはちょっと・・・・」
「いやなら食べないで結構です。おれはナルトの為に作ってますから」
「はいはい。わかりましたよ」
困った顔のカカシ先生に、イルカ先生がぴしりと返す。カカシ先生が両手を肩の位置まで上げた。
甘い卵焼き。なんだかお菓子みたいだ。苦い粥を食ってるおかげで尚更嬉しくなる。調子よく箸を進めた。
時間になり、理寧のおっさんが顔を出した時も、おれは機嫌よく庭に出ていた。
サスケに。イルカ先生に。カカシ先生に。
いっぱい元気をもらった。
さあ、今度は元気を返そう。
できないこともできるようになって。
準備を調え庭で待つ。イルカ先生が出てきた。いつもどおりに笑っている。きっとおれを心配させない為なのだ。
今日こそ時限印を見つけなければ。せめて、怪しい場所くらい感じ取りたい。
「宜しくな」
イルカ先生の声。
「お願いするってばよ!」
背筋をピンと伸ばして言い、おれは精神を集中させた。
その日の夕方、ついにおれはイルカ先生の時限印をみつけた。
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