強くなりたい。
強くなりたい。
強くなりたい。
心の中で念じる。
今、敵が見えた。
自分の中に。
対峙 by真也
「うちは中忍。出ろ」
看守が重々しく言った。怪訝そうな表情。きっと信じてないのだろう。俺を。
「お世話をかけました。罪を忘れず、里に尽くして参ります」
お決まりの言葉を言う。皆、俺の目を見ない。
「当分は監視がつきます。これも決まりですので」
黒眼鏡の上忍が事務的に告げた。俺は首肯く。それも、当然のことだろう。
どういう形であれ、俺は同胞に危害を及ぼしたのだから。
半月ぶりに外へ出た。太陽の光。眩しくて目を細める。俺は里へと向かった。
覚悟はしていた。非難と畏怖の視線。それまで受けていたものより、更に厳しい。
道をあける人々。ヒソヒソと囁かれる声。全てが閉じられていた。
俺はここから始めなければならない。これが、俺のしたことなのだ。
『うちはの末裔か。木の葉も愚かなことよ』
年老いた『草』は言った。蔑みの表情で。
『同族殺しの血など、絶やしておけばよかったものを。そのうち同胞に牙を向けようて。そうまでして、写輪眼が欲しかったのか』
『どういうことだ!』
岩忍が周りを取り囲んでいた。すさまじい気。おそらく、どいつも上忍クラスだろう。
『雷!挑発に乗るな!』
ナツヒが叫ぶ。ナツヒは日向家の三男で、俺とはスリーマンセルからの相棒だった。中忍になってからも、任務でよく組んだ。
『ほう。知らぬと言うか。では教えてやろう。おぬしの血、うちははの。殺し合ったのじゃ。一族同士でな』
『嘘だ』
『嘘ではない。うちはイタチという男が、同族を虐殺したのじゃよ』
男は嗤った。岩忍達が襲いかかる。その時、頭の中で何かかはじけた。
記憶は抜け落ちていた。
「馬鹿者!」
投げ飛ばされて、我に返った。見知った上忍達がいる。周りを見渡して、呆然とした。
広範囲に焼けこげた大地。転がるいくつかの死骸。炭化して、それが人であったなど、信じられなかった。
「雷」
ナツヒの声がした。振り向く。俺は目を見張った。
相棒の身体に火傷。その時、俺は自覚した。
これは全て、自分がしたことなのだと。
「痩せたな」
病室で、相棒はにやりと笑った。いつもと変わらぬ表情。胸が痛んだ。
「・・・・ナツヒ」
「おまえ、今にも死にそうな顔してるぞ。そっちが重傷みたいだ」
「すまない」
「オレがドジったんだ。上忍めざしてんのに、あれくらい避けないと駄目だよな」
苦笑しながら言う。言葉がなかった。傷つけたのは俺なのに。悔しくて、拳を握り込んだ。
「気にするな。あれは、明らかにおまえじゃなかった。でも」
考えて、見上げる。白眼が俺を見据えた。
「おまえの中にあるものならば、戦わないとな」
明確に言葉が継がれた。真摯な瞳。ナルトと同じ。
『諦めるな』
ナルトは言った。乗り越えろと。俺ならできると。
「ありがとう。それから、すまない。もう、俺と組まないでいいから」
言い捨てて、部屋を出た。ナツヒが後ろでなにか言っている。それを聞けるだけの余裕はもうなかった。走り出す。どこへ。誰にも迷惑をかけない場所へ。
俺は走り続けた。
小さな頃から、奴が立ちはだかっていると思っていた。
『うちはサスケ』が。
でも、ちがう。敵はいたのだ。確かに。思わぬところに。
強くなりたい。
強くなりたい。
強くなりたい。
心の中で念じる。
今、敵が見えた。
自分の中に。
自分を抑えられなかった悔しさ。激情に身を任せてしまった不甲斐なさ。
全てに今、勝ちたいと思った。
『ここなら・・・・・ここから、始めよう』
たどり着いた小さな家。それまで隠れ家として使っていた、森の中の古びた小屋。
その家の前に立ち、俺は自分に言った。
誰も頼ることはできない。頼って、傷つけたくはない。
一人で戦うんだ。
俺は奥歯を噛みしめ、その家の戸を開けた。
end
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