終わらない夢
 〜暗部編〜 by真也







ACT3



 昼になり、任務を終えたおれは暗部宿舎へと帰ってきた。通常、暗部の任務には護衛など昼間にするものもあるが、その大部分が夜襲や暗殺など、夜に適した内容だった。
 今夜の任務は暗殺。閨においてのそれは、おれの最も得意とするところだった。
 力もなく基礎的な結界しかはれない奴が任務を遂行する。弱い奴が強い奴を殺すには、相手を油断させるしかない。幸い、この姿はそれに十分適していた。
 もちろん弊害はあった。おかげで訓練と称して、いろんな奴の相手をさせられたのだから。
 守ってくれる人もなく、苦痛のみの日々。挫けそうになりながらも歯を食い縛り、閨と引き換えに一つ一つ、術を集めてきた。
 おれは一度見たものは、簡単には忘れなかった。小さい頃から、そういった訓練を積み重ねてきたのだ。あの暗部研究所で。
 当時は何故こんなことをするのかわからなかった。でも。今はそれに助けられている。術も増えたし、自分の身も充分守れるようになった。実績も積んで皆に認められてからは、閨もおれが選ぶ権利を持っている。と言っても任務で似たようなことをしているから、おれが誰かを誘うということは殆どなかったが。
 今、ここにいる奴の中で、おれの興味を引く術を持つ奴はいなかった。ただ、チャクラとかのコントロールが上手くできなくて、一日に使える術は限られていたのだが。
 報告をさっさと済ませて、部屋で休もう。
 そう思って集合場所にやってきた。入ってすぐ異変に気付く。そこは異様な空気が漂っていた。みな、息を潜め、小声で話している。
「おい。どうしたんだよ」
 おれは近くにいた仲間を掴まえた。オウガだった。 
「知らないの?」
「何が」
「あいつ。任務に成功したのよ」
「どうせ、仲間に助けられたんだろ」
 興味なくおれは言った。オウガが目を丸く見開いている。ため息を落としながら、言った。
「おまえ・・・・本当に『うちは』を知らないのね。里の出身じゃないとは思っていたけど・・・」
「うるさい。それがどうしたんだ」
「鈴。悪いことは言わない。『うちは』をなめないほうがいい。特にあいつは。オレは最近の里の事情は知らない。けれど、ダチもいるから奴の情報を仕入れてもいい。とにかく、油断するな」
 おれは苦笑した。ここは暗部なのに。それでも、少し気持ちが和む。人間らしい感情に触れられたから。
「ありがと。じゃ、情報の方、頼むよ」
「ああ。オレのダチってさ、日向アキヒって言うのよ。里じゃもう、かなりの位置にいるはずだから。任せて」
「うん。よろしく」
 仲間の肩を叩き、おれは奥へと進んだ。
 雷とかいう奴は見事に任務を遂行したらしい。しかも、一人で。
 数人の仲間と共に目的地まで行ったのはよかった。ターゲットを確認し、中の様子を確かめて大まかな状態が分かった時点で、奴は仲間が止めるのを押し切り、単独で侵入した。
 任務内容はある屋敷内の住人の一掃殲滅。かなりの人数が必要だと考えられていた。が、しかし。
 奴が侵入して半刻も経たないあいだに、屋敷の内部から爆音と共に炎が上がった。
「恐ろしかったぜぇ。屋敷から奴が出てきた時によ、目が真っ赤なんだよ。気持ち悪い。あれが、写輪眼って奴だな」
 一緒に任務についた奴が言っていた。念のため仲間が屋敷を調べに行ったが、その時は中の奴らの殆どが絶命していたらしい。短時間で、それをやり遂げてから、屋敷に火を放ったというのか。
 ざわめきたっていたその場所が急にしんとなった。なにげなく、戸口に目をやる。視線がぶつかった。
 漆黒の瞳がおれを見ている。また、だ。
 おれも目を反らさなかった。反らしたら、負ける気がしたから。
 ふいに奴は視線を外した。大きく息を吐き出し、肩の力を緩める。掌には、じっとりと汗をかいていた。
 奴はおれの前を通り過ぎ、シノの前までいった。
「派手にやったようだな」
 シノが言う。
「任務内容には殲滅とあった。より確実な方法を選んだだけだ」
 憮然と奴が返す。
「だが、ここは暗部だ。砦を落とすのとは違う。出来るだけ、後を残さずやってくれ」
「主と一部のみの暗殺ならば、屋敷を焼きはしなかった」
「それがわかっているなら、いい」
 シノの言葉に首肯き、奴は踵を返した。シノが背中に言葉を投げる。
「次の任務はまだ未定だ。知らせがあるまで待機するように」
「わかった」
 振り向きもせず、奴は答えを返す。そのまま部屋の外へと消えた。



 気に入らない。
『うちは』がなんだというんだ。
『写輪眼』だと。
 それがどれほどのもんか、確かめてやる。



 自然と拳を握りしめながら、おれは奴の去った方を睨み付けた。 





ACT4へ続く

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