終わらない夢
 〜暗部編〜 by真也








ACT13



 任務。
 それにはいつも、説明のできない感情がつきまとっていた。
 閨に引き込み、身体を任せる。相手が油断したところで命を奪う。
 方法はどうあれ、任務は遂行することに意義がある。
 頭でわかっていても、自分がしていることは騙し討ちに他ならない。
 人殺しに綺麗も汚いもない。どれも本質は同じだ。それでも。
 心の奥底では、もっと自分の力を試したかったのかもしれない。
 なんの後ろめたさもなく、自らの命を賭けて。
 真っ正面から。





「つまり、お前が囮ということになるが・・・・できるか?」
 作戦の概要を説明した後、雷が訊いた。
「要するにおまえが見つからないよう、適当に騒ぎを起こして逃げ切ればいいんだろう?」
「そういうことだ。もし無理なら、俺が代わってもいいが。それでも充分事足りる」
「馬鹿にすんなよ。それくらい、やってみせる」
 ムキになって言った。「閨」だけでないことを証明したかったから。
「ならば頼む。攪乱は派手にな。俺のことは放っておけ。自分で何とかできる」
「当然。適当にやったら逃げるからな。落ち合う場所に来なけりゃ、おいて帰るぜ」
「別に構わん。そういうことがあればな」
 初めて会った時同じことを言ったら、殴り倒されそうな台詞。今は気にせずという感じで聞き流している。
 気のせいだろうか。奴の態度が柔らかくなった気がする。それとも、おれがそう感じるだけなのか。
 ほんの数時間前、ナツヒという少年と話していた。
 飾らない会話の中に見えるお互いへの思いやり。確かに互いを信頼し合っていた。
 あれが、友達。
 羨ましいと思った。
 自分には心当たりのないものだったから。


 否、一つだけある。


 なんとなく、遠い昔を思いだした。まだ世界にシギとナギ、自分しかいないと本気で思っていた頃。
 本棚の陰に偶然見つけた。
 黒い目と黒髪の子供。自分と同じくらいに見えた。
 初めて見る外部の人間。
 驚いて、机の陰に隠れた。息を潜めて辺りを伺う。
 ほどなくして、ドアの閉まる音がした。
 彼はいなくなっていた。
 あれがもしそうだと言えるなら、彼がおれの唯一の友達。
 誰で、今は何処にいるか、生きているのかさえわからないけど。
「行くぞ」
 ぼそりと低音が出される。
 おれ達は王城に潜入した。





「はっ!」
 火遁の術は上々の出来だった。実戦で使ったことは数度しかなかったけど、地道に練習してきてよかった。
 逃げ惑う人々。駆けつける衛兵達。クナイで薙ぎ払って走った。
 二発。三発火炎を投げる。外壁を破壊しながら、逃げ道の目算を立てた。おそらくあっちが北。
 そろそろ脱出口を作らなければ。
 大きくチャクラをかき集めて、おれは火遁印を組んだ。
 四度目の火遁。外壁がごそりと抜けた。よし、いける。おれは大きく跳んだ。
 着地をそつなくこなして、石畳の道を北へと走る。追っ手の気配を感じた。
 まずいな。撒いておかなければ。風遁で風を起こして、毒針をそれに乗せる。これで、かなりの人数を足留めできたはず。
 振り向いて実際にそれを確認した後、おれは全力で走りだした。息が上がってくる。今ので予想以上にチャクラを消費した。早く落ち合う場所にたどり着かなければ、長期戦になるとこちらが不利だ。
 もう少し。城の北の城門が待ち合わせの場所だ。
 ふと思う。雷は成功しただろうか。いや、考えるのはよそう。今はこの場を全力で逃げることが先決。奴はあれだけ強いのだから、きっと今ごろ先回りしているかもしれない。
 行く手を誰かが阻んだ。額当てのマークからすると砂忍。奥歯を噛み締め、構えをとる。攻撃。
「!」 
 敵に毒は効かなかった。たぶんおれと同じ。まずい。突風が向かって来た。
「くっ」
 真空が身体を切り裂く。第二弾を防がなければ。精神集中。火炎印を組んだ。しかし、チャクラが足りない。
 二度目の真空が駆け抜ける。左腿に激痛。かなり深くやられてしまった。足留めするつもりか。任務に失敗するわけにはいかない。
 チャクラの残りはあと僅か。ならばもう、あれしかない。
『鈴。結界には二通りある。一つは中のものを守る防御結界。そして外のものをなかに入れない攻撃結界。どちらも使い方次第で大きな武器になる』
 鳴が教えてくれた、自分を守り、他者を攻撃する方法。せめてこいつだけでも道連れにしてやる。
 おれは口呪を唱え、結界印を組んだ。極限まで張り詰められた気が青白く光ってゆく。残りのチャクラを全部これに乗せて。



 結界術。『攻撃結界』



 砂忍が弾き飛ばされてゆく。落ちて、動かなくなった。
 やった。
 身体が支えられなくなる。気も、チャクラも使い果たしてしまった。もう限界だ。でもいいや、全力で戦ったから。
 あいつはうまく逃げられたかな。
 砂の上に崩れ落ちながら、おれは妙な満足感を感じていた。






ACT14へ続く

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