やめよう。
どれだけ求めても、あいつは俺を呼ばない。
極限に来た今でも、俺は求められなかった。間違っていたのだ。
だから、これで凍らせてしまおう。
お前を欲しがる俺を。
お前を壊す俺を。
動きださないように、熱のない世界へ。
翼持てるもの by真也
ACT7 〜『羽化』編〜
気になって仕方がなかった。
忍とは言えど、濡れたまま放り出してしまったのだ。自責の念に堪え切れず、あいつの部屋まで向かった。
動いていればいい。
眠っていればいい。
それなら、すぐに帰ってこよう。受付にあいつの休暇届を出して。
自分に言い訳しながらナルトの部屋までやってきた。窓から中を伺う。俺は目を見張った。
いつもと変わらない部屋の中、あいつがいた。手足を丸め、床に横たわっている。
倒れたか。
瞬時に中へと忍んだ。あいつは反応しない。気を感じ取れないほどなのか。
力の入らない身体を抱きあげる。思ったより軽くなっていた。ゆっくりとベッドの上に降ろす。
無意識だろうか。ナルトの手がシーツを彷徨う。何を探しているんだ。その手を取った。
体温を感知し脈を計る。完全な発熱状態。念のため額に手を当てる。熱い。
あいつが口を開けた。乾いた唇。熱い息。水を流しこもうとした。
うまくいかない。
流し込んだ水を吐き出し、あいつが咽せる。身体が弱り過ぎて口に含めないのだ。自分の不甲斐なさに唇を噛む。水を含み、口移しに流し込んだ。咽せないように、少しずつ。
ごくり。
今度は上手くいったようだ。ナルトの喉が上下する。
一旦コップを流しに返そうと身体を離した。あいつの手が袖を引く。再び口が開けられた。
誘う唇。先程の水で僅かに濡れている。再度唇を繋いだ。
流れゆく水。俺の中からあいつの中へ。その時が刹那に思えた。
解熱剤を押し込む。咽せそうになったあいつの舌が、触れた。
欲しい。
衝動のままに息を奪った。熱い舌を絡める。もう止まらなかった。
酸素を求めた手が俺の服を引く。息を与えて唇を落とした。
瞼に。頬に。首筋に。薄い肌を味わってゆく。
ナルトは拒まなかった。熱のため、そんな余裕もないのだろう。きっと意識もはっきりしていないはず。
極限。
身体も精神も限界に達している今なら。
臨界点の今なら、本当のお前が現われるかもしれない。
お前が真に求めるものが、分かるかもしれない
丹念に愛撫を重ねる。熱を帯びた身体は敏感だった。
開いてゆく。お前の身体が。だんだんと。
そっとそこに触れた。少しずつ指を進める。内部は既に潤いつつあった。
ゆっくりと探ってゆく。どこだ。お前を呼び覚ます鍵は。
あいつの中に入る。ナルトが背を震わせた。
受け入れている。
受け入れられている。
段階を追い、確実にその身体を追い詰めていった。白い肌が鮮やかに色づいてゆく。声。甘く部屋に響いた。
もうすぐだ。
もうすぐ、全ての余裕がなくなる。
さあ、呼んでくれ。
頂点の瞬間、あいつが目を開いた。
大きく開かれた空色の瞳。求める俺を映しだしている。が、しかし。
言葉はなかった。
あいつが崩れてゆく。全身の力が抜けた。
ついに俺は、呼ばれなかった。
やめよう。
どれだけ求めても、あいつは俺を呼ばない。
極限に来た今でも、俺は求められなかった。間違っていたのだ。
だから、これで凍らせてしまおう。
お前を欲しがる俺を。
お前を壊す俺を。
動きださないように、熱のない世界へ。
交わりを解き、身仕度を整える。
湯を沸かし、あいつの身体を清めた。極力、負担を掛けないようにして。
衣服を取り替える。濡れた毛布も新しいものに換えた。
額を冷やし、ベッドの傍らで解熱を待つ。
徐々に緩やかになってゆく呼吸。薬が効きはじめていた。
完全に熱が下がったのを見届けて、俺はあいつの部屋を出た。
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