翼持てるもの     by真也






ACT5 〜『翼翼』編〜




 感情。いつもそれだけが止められない。
 自分でもわかる、理屈ではない負の心。俺を捕らえる嵐になる。
 渡さない。
 誰であろうと。何であろうと。邪魔をする奴は殺す。
 跡形もなく、消し去ってやる。



「何をしている」
 有無を言わさず割って入った。碧眼が大きく見張られる。
「さっきから呼んでいる。早く来い」
 手首を掴んで引き剥がす。あいつの手が振りほどこうと動いた。
「あっ、ちょっと!おれ今話し中だろっ」
 拒むのか。
「サスケさん、乱暴はやめて下さい」
 邪魔をするな。ナルトに何の用だ。視線に最大限、念を入れる。
「サスケっ、やめろよ。リー、もう行ってくれ」
 ナルトが庇った。何故庇う。そいつがそんなに大切なのか。
「すいません、では」
 奴がその場を去ってゆく。ナルトがそれを見つめていた。湧き起こる感情。嫉妬。
「・・・・・来い」
 振り向くあいつを睨みつける。あてがわれた天幕へと向かった。



 荒れ狂うものを必死で抑える。何をしてやろう。どうすればいいのだ。
 どれだけ痛めつければ、お前は俺だけを見つめる。
 心が欲しい。
 それが憎悪でも構わない。


「何を話していた」
 ベストを脱ぎ捨てながら尋ねる。困ったような目が俺を見た。
「別に大したことじゃないよ。心配してくれてんのかな。そのうち弁当持ってきてくれるってさ」
「ちっ・・・・奴か」
 合点して吐き捨てた。やり場のない苛立ちを胸に、腰かけた。
 人の良さだけが取り柄の男。充分考えられることだ。しかし、口は封じなければ。近いうちに脅しを掛けておこうと考えていた時、ナルトが訊いた。
「で、いつになったんだ?決行」
「明日の晩、城が寝静まってからだ」
 決定事項を告げる。あいつが「そうか」と頷いた。
「城の前と後ろで二手にわかれんだろ?開始の合図はどうするんだ?のろし?」
「いや、火柱を上げる。それを見て口寄せしてくれ」
 作戦の段取りを告げる。あいつが返事をしながら、ベストを掛けていた。
 

 どうしてなのだろう。
 俺の悪行は足りているはずなのに。
 あいつは普段と変わらず、俺と話す。
 何もなかったように。
 俺とのことなど忘れたように。
 おまえにとって、俺は何にもなれないのか。
 こんなにもお前が、欲しいのに。


 伸ばされた手を思い切り引いた。ナルトが引きずられ横倒しになる。
「何をしている!」
 怒りに任せて声を荒げる。空色の瞳が見上げてきた。睨み返す。


 触れるな。
 優しく手など伸ばすな。
 近づく位なら、殺せ。


「役目でも果たすつもりか」
 わからないなら、わからせてやる。
「おまえが、望むなら」
 何を今さら。隙でも突くつもりか。
「ならば、そうしろ」
 低く告げた。あいつが足元へと跪く。再度俺を見上げた。
「脱いだ方が、いいか?」
 震える声。それでも恐れていない。傷つけてやりたい衝動を必死で抑える。
「任務前だ。戦力を減らすわけにはいかない。・・・・・別の方法があるだろう」
 戦いで失う訳にはいかない。お前は、俺を殺すのだから。
 言われた意味が分からないのか、ナルトが首を傾げる。しばらくして思いついたようだ。 


 できるか?
 耐えられるか?
 これほどの辱めを。
 耐えなくてもいい。
 牙を向けろ。


 あいつが口を結んだ。そろそろと俺の下衣に手を掛ける。震える指先で、前をくつろげた。
 俺は戸惑う。するのかと。
 碧眼が閉じられた。金色の睫が姿を現わす。薄く開いた唇。微かに覗く舌。
 どうしてそんなことをする。お前は辱められているのに。
 本当に、俺が望んだからなのか?




 説明はつかなかった。
 それをさせてはいけない気がして、あいつの横面を張り倒した。身仕度をして部屋を飛び出す。息が乱れるまで駆けた。


3へ続く

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