翼持てるもの     by真也






ACT5 〜『翼翼』編〜



2
 感情。いつもそれだけが止められない。
 自分でもわかる、理屈ではない負の心。俺を捕らえる嵐になる。
 渡さない。
 誰であろうと。何であろうと。邪魔をする奴は殺す。
 跡形もなく、消し去ってやる。



「何をしている」
 有無を言わさず割って入った。碧眼が大きく見張られる。
「さっきから呼んでいる。早く来い」
 手首を掴んで引き剥がす。あいつの手が振りほどこうと動いた。
「あっ、ちょっと!おれ今話し中だろっ」
 拒むのか。
「サスケさん、乱暴はやめて下さい」
 邪魔をするな。ナルトに何の用だ。視線に最大限、念を入れる。
「サスケっ、やめろよ。リー、もう行ってくれ」
 ナルトが庇った。何故庇う。そいつがそんなに大切なのか。
「すいません、では」
 奴がその場を去ってゆく。ナルトがそれを見つめていた。湧き起こる感情。嫉妬。
「・・・・・来い」
 振り向くあいつを睨みつける。あてがわれた天幕へと向かった。



 荒れ狂うものを必死で抑える。何をしてやろう。どうすればいいのだ。
 どれだけ痛めつければ、お前は俺だけを見つめる。
 心が欲しい。
 それが憎悪でも構わない。


「何を話していた」
 ベストを脱ぎ捨てながら尋ねる。困ったような目が俺を見た。
「別に大したことじゃないよ。心配してくれてんのかな。そのうち弁当持ってきてくれるってさ」
「ちっ・・・・奴か」
 合点して吐き捨てた。やり場のない苛立ちを胸に、腰かけた。
 人の良さだけが取り柄の男。充分考えられることだ。しかし、口は封じなければ。近いうちに脅しを掛けておこうと考えていた時、ナルトが訊いた。
「で、いつになったんだ?決行」
「明日の晩、城が寝静まってからだ」
 決定事項を告げる。あいつが「そうか」と頷いた。
「城の前と後ろで二手にわかれんだろ?開始の合図はどうするんだ?のろし?」
「いや、火柱を上げる。それを見て口寄せしてくれ」
 作戦の段取りを告げる。あいつが返事をしながら、ベストを掛けていた。
 

 どうしてなのだろう。
 俺の悪行は足りているはずなのに。
 あいつは普段と変わらず、俺と話す。
 何もなかったように。
 俺とのことなど忘れたように。
 おまえにとって、俺は何にもなれないのか。
 こんなにもお前が、欲しいのに。


 伸ばされた手を思い切り引いた。ナルトが引きずられ横倒しになる。
「何をしている!」
 怒りに任せて声を荒げる。空色の瞳が見上げてきた。睨み返す。


 触れるな。
 優しく手など伸ばすな。
 近づく位なら、殺せ。


「役目でも果たすつもりか」
 わからないなら、わからせてやる。
「おまえが、望むなら」
 何を今さら。隙でも突くつもりか。
「ならば、そうしろ」
 低く告げた。あいつが足元へと跪く。再度俺を見上げた。
「脱いだ方が、いいか?」
 震える声。それでも恐れていない。傷つけてやりたい衝動を必死で抑える。
「任務前だ。戦力を減らすわけにはいかない。・・・・・別の方法があるだろう」
 戦いで失う訳にはいかない。お前は、俺を殺すのだから。
 言われた意味が分からないのか、ナルトが首を傾げる。しばらくして思いついたようだ。 


 できるか?
 耐えられるか?
 これほどの辱めを。
 耐えなくてもいい。
 牙を向けろ。


 あいつが口を結んだ。そろそろと俺の下衣に手を掛ける。震える指先で、前をくつろげた。
 俺は戸惑う。するのかと。
 碧眼が閉じられた。金色の睫が姿を現わす。薄く開いた唇。微かに覗く舌。
 どうしてそんなことをする。お前は辱められているのに。
 本当に、俺が望んだからなのか?




 説明はつかなかった。
 それをさせてはいけない気がして、あいつの横面を張り倒した。身仕度をして部屋を飛び出す。息が乱れるまで駆けた。


3へ続く

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