翼持てるもの     by真也






ACT5 〜『翼翼』編〜




 埃と書物の匂いの中で、俺は考える。あれは誰だったのだろうかと。
 上層部からの探り。それが一番考えられた。
 少なからず危惧する。俺は処分を受け、ナルトを取り上げられるのだろうかと。
 自分がしたことがそれに十分見合うとはわかっている。が、しかし。
 今、それをさせてはならない。何としてでも阻止しなければ。
 俺を始末するのは、あいつなのだから。 



 ナルトが変わった。
 具体的には説明できない。ただ、張り詰めていたものが少し、弛んだ気がする。
 情交のペースは変わらない。相変わらず俺に貪られている。なのに、何故。
 それまでのただ『耐える』感じから『受け入れる』感じへ、あいつは変化していた。それと、不可解な事が一つ。
 ことが終って身体を離す時、あいつは決まって眉を顰めた。まるでそれが不服であるかのように。
 見えない。
 あいつの心が、全く見えない。
 断片だけでもわかれば、それなりに対処が出来ると言うのに。
 最大限に思考を巡らせる。答えはでそうになかった。
 拒まれないと、混乱する。
 受け入れられると、見失ってしまう。自分がこれからしなければならないことを。
 信じたくなってしまう。あいつが俺を求めてくれると。
 どう動いていいのかわからず、ぼんやりとあいつを見つめることが多くなった。
 


 
 数日後。中忍全部と上忍の一部に招集が掛かった。任務受付所の会議室に集合する。大がかりな作戦が発表された。
 城攻めをするという。作戦の詳細を聞きながら目の前の中忍達に目を向けた。習慣のようにあいつを探す。いた。そこだけが輝く金の髪。
 ナルトが俺を見ていた。焦点の合わない瞳。何か考え事をしている。


 何を考えている。
 何がお前を捕らえているのだ。


 作戦の説明が終っても、あいつはぼんやりとしていた。 
「おい。聞いているのか」
 近づき、耳元で言った。ナルトの身体がびくりと揺れる。
「えっ、なっ、何?」
 焦ってしどろもどろになっている。再度尋ねた。
「口寄せは完璧かと訊いている」
「?何で?」
 大きく見開かれる碧眼。ぼんやりとはしていたが、まさかここまでとは。俺は大きく息を吐き出した。
「お前、任務の内容は聞いていたんだろうな」
「サスケ・・・いや、うちは上忍。おれ、ちょっと・・・」
 やっぱり。
「聞いていなかったな」
 凄味をきかせる。観念したのか、あいつが頷いた。



「・・・教えて、くれるのか」
 補助印を教えると言った俺に、ナルトは訊いた。答えを返す。あいつの表情が変わった。期待に満ちた目。笑む口元。複雑な思いを抱いて、俺はそれを見つめた。
 二人で術を練習する。スリーマンセルの時代のように。
 あの時は前だけを見つめていた。自分の目の前だけを。その道を誰かに重ねようなどとは、思いもしなかった日々。まわりにはイルカ先生がいて、カカシもいた。でも。
 今はもう、あの人はいない。カカシも遠い。自分で進んでゆくしかないのだ。
 俺はお前と共に進んでゆくことは出来ない。けれど、お前の踏み台ぐらいにはなれる。お前が大きく飛びあがる為の礎に。
 ナルトはまる一日かけて補助印を会得した。新しい術を得て嬉しそうに微笑む。それを尻目に、俺は文庫へと急いだ。本当は責めておかねばならない。あいつの感情を正のものにしてはならない。だのに。
 自分でも甘いと思ったが、どうしてもその笑顔を壊す気にはなれなかった。



2へ続く

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