封じられた夏〜お稽古カカシシリーズ過去編:カカシside by真也








ACT7



「じゃ、行ってくるな」
 俺の頭をクシャクシャとやった後、イルカは中忍試験へと向かった。
 今日から約一ヶ月、イルカはいない。
 頭の痛みも時々あるけど、大丈夫。そのうち慣れるだろうから。
 イルカさえいれば、なんでもない。こうやって時々会えるなら、任務もつまらなくない。
 強くなることをやめたわけじゃないけど、弱いのも悪くないと思いはじめた。
 ともかく、一ヶ月。イルカに会えるまで、我慢しよう。
 指折り数えて、俺は日々を送った。





「ふうん。じゃ、二次試験に入ったの」
「ああ。ひょっとしたらもう、終ってるかもな。今年は結構、筆記試験で落ちたらしいぞ」
 煙草をふかしながら、アスマが答えた。最近覚えたこの嗜好品を、奴はひどく気に入っていた。
「一次試験合格者のリストって、ある?」
「えっ。ここにあるけどよ。おい、任務がらみか?」
「どしてよ」
「珍しいじゃねぇか。おまえ、中忍試験なんて眼中なかったし。・・・・なんか、隠してるな」
 唯一仲間と言える同僚は、伸ばし初めの不精髭ヅラでにやりと笑った。肘でつつく。
「ないよ」
「嘘ツケ」
「なーにもなーいよ。ただの気まぐれ」
 興味なげに言いながら、俺はちらりとそのリストを見つめた。ある。
 うみのイルカは一次試験を突破していた。
 へえ。結構頭、よかったんだねぇ。
 ひょっとして、知識が先行して身体が動かなかったとか?
 だとしたら、イルカらしい。
 自然と口元が緩んだ。知らないのかね、『習うより慣れろ』っていうのさ。
「さて。お仕事いくかな」
「おまえ、明日から遠征だろ」
「そうなの。岩の国だよー」
「殺風景なトコだな。誰と組むんだよ」
「あいつ」
 横目をやりながら、俺はアスマの問いに答えた。
 アスマの目がそいつに向けられる。奴は煙草の火をくゆらせながら、口の端を僅かにあげた。
「気ぃつけろよ」
「なに」
「いろいろ聞く。おまえも知ってるだろが」
「まあね」
『変な素振り見せたら、上手くやっちまいな』
 微かな、殆ど聞こえないくらいの遠話で、同僚は言った。






 そいつとは、何度か組んだことがあった。
 特に強くもない。弱くもない奴。でも。
 ただ一つだけ、そいつは酷く狡猾な奴だった。






 切り払っても、切り払っても、彼らはむかってきた。手に手に、簡単な武器を携えて。
 岩の国の人々。生きるために戦っている。
 彼らは見つかるわけにはいかなかった。貧しい自国を捨てて、やっとここに隠れ住んだのだから。
 木の葉の国境地帯の一角に、彼らはひっそりと生存していた。
 国境を侵すものを追い払う。任務はそれだけでいいはずだった。なのに。
 奴は俺を囮にした。それ位はいい。生き残る自信はあったから。
 俺の追跡を逃れようとする彼らの行く先に、岩の国の部隊が待ち受けていた。
 部隊は逃亡者たちを虐殺した。ひとり残らず。
 奴は岩の国と手を組んでいた。
 自分の手を汚さず、高見の見物をしながら、獲物達の殲滅を見ていた。
 渦中に佇む俺さえも。



 感じないとでも思ったか。
 俺が『四代目が手に入れた人形』だから、心が痛まないとでも。
 心のない人形だから、面倒なことは押しつけて、互いに相殺させるつもりだったのか。
 岩忍たちがやってくる。
 逃亡者たちを屠っただけでは、まだ足りないのか。
 そんなに、それが、好きなのか。
 いいだろう、使ってやるよ。
 最上級の人殺しの道具を。
 俺自身さえも、道具の一つだから。



 面を放り投げ、左目を開く。写輪眼が動きだした。
 




 そこに生きているものすべての命を奪い、最後に俺は、奴の首を落とした。






ACT8へ続く




戻る