『太陽の呼ぶ声』
by真也
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ACT6
戻ろう。
それが本当に望む形ではなくても、あいつが傍にいてくれればいい。
ナルトがこうまでしてくれた事実は、決して消えたりしないから。
だから、戻ろう。
あの日々へ。
「よう」
待ちかねた声に目をやった。
「今日は、おまえなんだな」
ナルトがこちらにやってくる。
「ああ。そろそろだと思って代っておいた」
笑みを浮かべて答えた。前回のような事は避けたい。だから、あらかじめ身体の支配権を握っておいたのだ。
「そうか。さすがだな」
そう言われて首を振る。確かにかなりの時間、奴を抑え込めるようになった。けれど、今だ俺は奴を消せないでいる。本当は今すぐにでも消滅させたいのに。
「あせったって仕方ないだろ」
諭すように言われた。反論しかけてやめる。そうだな。焦っても解決しない。それは自分でもわかっていた。だけど感情が言うことを聞かない。心底、これ以上ナルトに迷惑をかけたくなかったから。
「なあ。謝んなよ」
下から覗きこみ、あいつが言う。返す言葉はなかった。言葉で償えるものではないが。
何か言おうとして気付いた。ナルトの泣きそうな顔。何やら考え込んでいる。疑問に思って尋ねた。
「そんなことないぜ。今日も元気一杯だってばよ」
率直に訊けば、わざと明るく話を逸らした。ぎこちない笑み。何かあると、確信した。
両肩を包み覗きこむ。すぐ近くの碧眼が揺れた。
「何もねぇよ」
確認すれば、細かく首が振られた。そのしぐさが更に不安を煽る。詰め寄った。
沈黙。
あいつは何も言わない。苦しそうに口を結んでいる。駄目なのか。
焦燥。仕方がないと思った。俺はそれ程のことをしたのだ。全て打ち明けてくれるはずがない。それでも呼んだ。あいつの名前を。
空白。
首に回された腕が、近づく唇が思考を封じた。それまでの不安を押し流してゆく。歯列の隙間を舌が滑り込む。奥へと伸びてきた。絡みつき、あいつの中へと誘われる。
いいのか?
おそるおそる舌を進めた。確かめるように内部を探る。あいつが嫌がってないのを確認して、更に奥へと進んだ。息を、奪う。
「聞いてくれ」
唇が離れた後、ナルトが言った。俺は目で先を促す。言葉が継がれた。
「これからおれがどんな目にあっても、どんな行動をとっても、奴と代らないでくれ」
思いもしなかった言葉。
「無茶なことだと分かってる。理由も今は言えない。だけど、おれが呼ぶまで待ってて欲しい」
待つだと?何をすると言うのだ。奴を倒すのなら、二人で協力した方がいいだろうに。
「おれ、きっとお前を呼ぶ。気付いたんだ。おまえが必要だって。一緒にいたいって。だから、頼む」
正直、動揺した。しかし、真摯なナルトの視線。見つめ合った後、心を決めた。
「俺は、お前を信じる」
心のまま告げた。あいつの顔がパッと輝く。名前が呼ばれ、ギュッと抱きつかれた。
不安がないと言えば嘘になる。でも、お前は俺を救ってくれた。自分に失望して、自らを棄ててしまいたかった俺を、お前は取り戻そうとしてくれた。だから、いい。
お前が望むのならば、俺はそれに従おう。
今から引っ込めばいいのかと訊けば、すまなそうに答えた。そんな顔、しなくていい。
待っていることを告げる。そうだ、俺は待っている。お前が呼んでくれるのを。
「うん。必ず呼ぶ」
あいつの言葉を、耳に刻みつけた。約束料をせがむ。こんな時にずるいと思ったが、どうしても欲しかった。
ナルトが頷く。顔を近づけた。薄く開いた口。受け入れてくれるのだ。俺を。
十分に唇を味わった後、俺は意識の底に沈んだ。結界を更に厳重に固め、安全地帯に身を潜めた。
信じている。
待っている。
お前が呼んでくれるのを。
お前が求めてくれるのを。
お前が、全てだから。
誤魔化しようのない心を抱きながら、俺は深い眠りへとついた。
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