『太陽の呼ぶ声』
by真也
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ACT5
つくづく勝手だと思う。でも。
あいつのもとに戻れることで、強くなれる自分がいる。
俺は更に力をつけていった。迷いがなくなった日より、より集中出来るようになった。
その翌日、不可解なことが起こった。俺は奴に無理やり押し出されたのだ。その時、確かに俺は安全地帯の外にいた。ナルトが来ているのだ。奴が危害を加えようとしたら、すぐさま支配権を握るつもりだった。
「代わったのか?」
ナルトが覗きこんでいる。俺は言葉を返した。
「ああ。だが俺の意志じゃない。奴が押し出したようだ」
奴が何故そんなことをしたのか。俺が表面に出てくることは、奴にとっては危険なはずだ。理由がわからず考え込んだ。目の端に入ってふと気付く。ナルトが浮かない顔をしていた。
「何でもないよ。今日二日酔いだから、ちょっと頭痛いだけ」
尋ねる俺に、あいつはそう答えた。自嘲のような表情。それがすぐに微笑みに変わった。
「うん。だから、心配するなって」
半分疑いながらも笑みを返す。問い詰めても仕方がない。それに、俺にその資格はなかった。必要ならば言ってくれる。そう信じた。
「おまえの方はどう?」
「結構慣れてきた。コツも掴めたぞ」
こちらの様子を訊かれる。胸を張って答えた。今は少しの時間しか奴を抑え込めないけど、こつはもうわかっている。後は力ずくで押しのけるだけだ。
「そっか。ま、がんばれよ」
あいつの言葉。やはりそれが力になる。俺を奮い立たせてゆく。
ナルトの表情も変わった。覇気が帰ってきている。少し、安心した。
今はまだ力が足りない。でも、自分に出来ることをしよう。全力で。それが、お前の為になるように。
ナルトが息を吸い込み、座りなおした。背筋を伸ばして俺を見つめる。口を開いた。
「サスケ。おれ、きっと今の状態を何とかする。たぶん、おまえの力も借りる事になるだろうけど。でも、絶対一緒に任務やってたあの日を取り戻す。だから・・・・」
一度語を止める。再度息を吸って言った。
「だから、全てが終った時、おまえに話して欲しい事があるんだ」
まっすぐな視線。まっすぐな瞳。まっすぐな、意志。
拒む理由はなかった。あいつが何を聞きたいのかは、わからない。でも、全て話そうと思った。
「な、いいよな?」
念押しに目で頷いた。ナルトが微笑む。太陽のような、それで。
「じゃ、前払い」
腕が引かれた。あいつの顔が近づく。何が起こっているのかわからなかった。
温かい。
欲していたものがここにある。それまでのように、手練手管で掠め取ったものじゃない。あいつの方から与えてくれたのだ。
「飲もうぜ!おまえ、酒飲んでたんだってな。奴が言ってたぜ」
驚きに我を忘れる俺に、あいつが宣言する。今あったことが信じられなくて、注がれるままに酒を飲んだ。何杯飲んだか忘れるほど。俺達は朝まで飲み続けた。
昨夜奴が出て来なかったのは、これを狙ったんじゃないだろうな。
厠で吐きながら、俺は思った。ずきずきと頭の芯が疼く。完全に二日酔いの状態だった。
畜生。こういう時こそ代れよ。頭の中で愚痴る。胃の中が空になるまで吐き、座敷に敷いてある布団に潜り込んだ。
休まなければ
横になりながら思う。夕方にはあいつが来るのだ。その時疲れで力及ばず、なんてことになりたくない。目を閉じながら、俺は意識の中の安全地帯へと帰った。
目覚めた時、何だか嫌な予感がした。小さな声。押し殺した喘ぎが聞こえた。
まずい。
まだ疼く頭で駆け上がる。閨が始まっていた。
させるか。
奴に圧力をかけ始めた。だが、弱った今の状態では、すぐに奴と代れない。それでは意味がないのだ。ならば、体ごと封じてやるのみ。
俺は口呪を唱え、緊縛印を組んだ。俺自身に緊縛術をかけてやる。
効いてるな。
印を組みながら、にやりと笑んだ。これで、少なくともあの行為は阻止出来るはず。
『やるわね』
言葉と共に表に押し出された。途端に、緊縛の圧力が俺を襲う。床に倒れ姿勢のまま、それに耐えた。
「サスケ!」
ナルトが覗きこんでいる。
「・・・・・大丈夫だ」
目を開け、最大限に笑った。見たところ、行為は妨害できたらしい。安心する。よかった。お前に嫌な思いをさせずに済んだ。
しばらく様子を見て、術を解こうと思ったその時。
「無茶するなよ!待ってろ。今、解くから・・・」
ナルトが印を組みだした。お前が解術、だって?
「おれだって、遊んでたわけじゃないんだぜ」
あいつがにやりと笑う。正確な解術印が繰り出された。
『解』
緊縛が解ける。みるみるうちに息が楽になっていった。
「・・・・すまない」
起き上がり、あいつに言う。
「へへっ、おれもやるだろ?」
自慢そうに答えが返ってきた。苦笑する。お前、本当に頑張ってるんだな。俺が知っていたお前は、緊縛術なんて解けなかった。
「サンキュ」
首に手が回される。あいつが言った。温かい身体が密着する。
「助けてくれたんだろ」
笑いながら見上げてくる。鼓動が跳ね上がった。
「奴が気に入らなかっただけだ」
ぼそぼそと言う。素直に認めたくなかった。
「二日酔い、ごめんな」
謝られて戸惑う。俺も謝り返した。ふとその欲求を感じて、俺は迷った。
いいだろうか。
すぐ近くにあいつの項。あいつのにおい。
抱きしめたい。
意を決して背中に手をやった。強く力を込める。ナルトは抗わなかった。
「身体、もう大丈夫か?」
あいつが訊く。声には驚きも嫌悪もなかった。ホッとする。奴がしていたとはいえ、身体は俺だ。あいつは俺に抱かれていたのだ。触れたらその行為を思いだすかもしれない。だから、迷ったのだ。
これだけでいい。
ナルトに触れられる。
俺は今まで、そうしてきたのだ。
これからもずっと、それで満足してゆける。
あいつだってこれ以上は望まないはずだ。
だから、こうしていこう。
相棒という形のままで。
あいつの温もりを感じながら、俺は固く決心した。
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