封じられた夏〜お稽古カカシシリーズ過去編:カカシside〜 by真也 ACT10 「イルカちゃん、おはよう」 「おはようございます!」 「しばらくみなかったわねぇ。どうしてたの?」 「うん、ちょっと寝込んじゃって・・・・疲れがでたのかな」 「そうそう。中忍試験、受かったんだって?おめでとう」 「へへ・・・ありがとうございます」 「よかったねぇ」 「うん、今年も落ちたらどうしようかと思った。やっぱ、下忍じゃ生活、苦しいし」 「ま、しっかりがんばりなよ」 「はい!」 近所のおばさん背中を叩かれ、イルカは受付へと向かった。朝の光の中を、駆けてゆく。 イルカは三日間家で休養し、今日任務に復帰した。 俺は草むらに潜む。面を被り、気配を殺して。たぶん、気配を出してても見つからないだろうけど。 イルカに施した封印は、上手く効いているようだった。 これからいつ、それが解き放たれるかわからないけど。 それまでにきっと、イルカの前に立つから。今とは違う俺になって。 なんにでもなる。 いつか、出会えるためならば。 イルカのように努力して、一つ一つ積み上げて。どんなことでも出来るようになろう。 イルカの隣にふさわしい俺になるんだ。 それまでは『暗部』でいる。個人ではない、ただの暗部で。 だんだんと小さくなる背中を見つめて、俺は心に誓った。 「初めまして」 そう言って、イルカの前に立った。その日までずっと見つめて来た。ただ一つの影となって。 イルカが鈍くてよかった。ことごとく、彼は気付かなかったから。 そうして今、彼は俺の隣にいる。 望まれたのではない。また俺が奪ったのだ。でも。 イルカは言ってくれた。共に努力すると。 嬉しかった。 俺は努力する。今まで以上に。彼に望んでもらえるように。 彼と歩いてゆけるように。 イルカしかいらない。 それは、あの頃も今も同じ。 だからこそ。 「何見てんですか」 不機嫌そうな声に我に返った。目をやれば、黒い瞳が見つめている。 「いや。寝顔がかわいいなと」 「悪かったですね。寝顔だけで」 「違いますよう。アノ顔もかわいいです」 「やめてください!」 口をとがらせ、背中を向けた。 「何故ですか?本当にかわいいのに」 言いながら、肩に手を置く。途端に肘鉄が入った。効かないけれど。 「オレはそんなのっ、嫌なんです」 「俺はホッとしてますよ。アンタの苦しむ顔は、もう見たくない」 それは本心。心からの俺の願い。苦しめたのが俺だからこそ。 後ろから、抱きしめた。 「カカシ先生・・・・」 「俺、努力します。これからも、ずっと」 そう、努力する。決してやめたりしない。 好きだ。なんて言えない。 愛してる。なんて言う資格ない。 だから、一生努力しつづける。 それだけが、俺にできること。 腕に力を込めた。密着した感覚が、身体を呼び覚ませる。 「イルカ先生」 「はい」 「も一回、努力していいですか?」 「なに言ってんですか!」 再度肘鉄が入った。今度は防御してなかったから痛い。彼は慌てて身を起こした。よろよろと立ち上がって身繕いをする。 「俺は明日、早いんですっ」 もたもたと帯を結んでいる。引き戻して再度それを解くのは、ワケないけどね。 今日は勘弁しますよ。嫌われたくないから。 正直、週一回は身体的にキツいんですけどね。 「なに笑ってんですか!」 目くじらをたてて怒っている。それもかわいい。年上に言うのは失礼だけど。 「カカシ先生!聞いてるんですか!」 怒鳴る彼を見つめながら、俺はにんまり、頬杖をついた。 悪いけど、もう離しませんよ。 そのかわり、努力します。 アンタの隣にいられるように。 END イルカside『ふたたびの夏』へ |